漏電管理は予防保全

漏電測定器(漏電計、クランプメーター)の普及によって漏電の測定が比較的簡単に行えるようになり、漏電に対する議論が深まってきています。

 

しばらく以前までは火災の原因が不明な場合、漏電らしいで済まされることが多かった。 そして、漏電は怖いものの代表として取り扱われてきた。 その一方で漏電計の普及で漏電さえ管理すれば事故がなくなるかのような誇張された主張も見受けられるようになった。 

この状況を冷めた目で見ていると従来は、原因を追求できない責任逃れとして使われ、 最近ではこれが営業用の宣伝武器として使われようとしている。 

これらのことは電気設備を預かり管理している技術者の立場とは関係ない事である。そしてこれに関して現場を管理している技術者からの発言が少ないように思われる。 

ここで現場を預かる技術者として1つの実態について検討してみたい。 

現場の技術者として、これが漏電の原因であると最終地点まで突き止めた事例がどの程度あるのであろうか。漏電の原因を究明できる数は、周辺の状況を見ている限り、それほど多いとは思えない。 一方で漏電遮断器が働きこれの原因究明に非常に苦労した人が多いはずである。

別の面から、漏電の発生率について考えてみると、特定の機器、特にヒーターを使用した熱物の機器での漏電発生率は大幅に減っているが、トータルして見た場合には小生の経験からいって大幅に減少しているとは考えられない。そして、たとえば事務所ビルやコンビニのような漏電の原因になるような要素の少ない場所においては数年にわたって全く漏電が発生しない場合もあるが、条件の悪い工場のような場合には年に1回以上の割合で漏電が発生している。管理を開始した当初においては年に数回の割合で漏電が発生した事業所が少なくなかった。もっとも漏電の電流値については大きいものは100アンペアを超えるものから小さいものでは1mA程度のものまで含めてのことであるが。この発生頻度については、小生の直接かかわった事業所についてであるが、それ以外のところにおいても大きな違いはないものとみている。

一方、原因究明ができた事例として発表されているものを見ると、小生の経験から見る限り極めて限られた一部分でしかない。

現実の発表例を見ると、漏電の原因の限られた1例を、まるで鬼の首でも取ったかのように、穿った見方をすれば、これが漏電の全てであるかのような大げさに表現されている。

しかし、それでもこのような事例とて発表されているものは極めて少ない。この状況は決して漏電の実態を表したものとはいえない。結果的に原因が究明されているものは氷山の一角でしかないといえる。

この様なことから漏電の原因箇所を究明できたとする回数と、発生回数との間に大きな隔たりがあることに気がつくと思う。

 もしこの数値の差が原因が究明できずにそのまま残っているとしたらどのようなことになるかを考えたことがあるだろうか。 日本全国いたるところで、漏電しているはずである。ひどい事業所では数10ヵ所で漏電が継続していなければならない。しかし現実にはどうであろうか。無視していいとは言わないが膨大な量でないことだけははっきりしている。 この数値の差は何を意味するのでしょうか?

 実はこの数値の差は感覚の違いでもなければ数値が違っているわけでもないのです。ここに電気設備を預かり管理する技術者の立場として究明すべき大きな課題が隠されている。

小生は以前、漏電管理の結論として「漏電管理は設備のバロメーターである」と提唱した。しかしこれに対しての反応はほとんどなかった。ところがこれと前後するように、 漏電の管理 さえすればあたかもすべての事故がなくなるかのようなコマーシャルコピーが出回ってきた。これを管理と結び付けたのでお客にとっては最悪の事態となった。 なぜならば漏電は火災や感電の原因として恐れられているが、現実には漏電による火災は漏電の回数から見る限り一万回に一回も発生するかどうかであり、感電についてもアースが不良のために感電することは多くても、漏電していることが原因で感電することは漏電の回数1000回に対して1回程度であり、漏電で感電する事態は例外といっても差し支えない。漏電で最も恐れられている火災と感電が漏電の実体の中で占める割合は例外的なものでしかないのである。

一方漏電警報が出た場合にこれの原因を究明できる割合は極めて1部にすぎず、大部分は原因不明である。しかし、現実問題として漏電を放置しておいて、直接的な目に見える形の実害はでていないのである。良いのか悪いのか、根拠はなしにこの事実だけは技術者全員が知っている。

そこで取る手段は警報器の機能停止である。お客は警報がでなければ、問題ないものと思っているし、現実に漏電が原因であるとはっきりしているトラブルは絶無とみて良い。営業の立場から見れば、願ったり叶ったりである。実にありがたい状況である。

これでお客が本当に納得するのであろうか?

そこで改めて強く主張したい。

”漏電の状況が普段と違う場合にはその原因を徹底的に追求しよう!” と。

漏電の状況が普段と違うという事は、そこには間違いなく原因があると言う事。そしてそれは故障、トラブルの前兆現象であるという事である。

この漏電の原因箇所を追求し、修理、改修する事によってこれから発生するであろう不意打ちの故障、トラブルを回避する事ができる。場合によってはそれまでに発生していた機器の誤動作の原因である事もある。

漏電の管理は99%以上の割合で予防保全なのである。

事故防止に役立つことは極めて極めて希である。個人的には未だ経験したことがない。

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