測定にあたっての注意事項

接地線は、原則論で云えばいかなる場所であっても電流が流れてはならない。接地は保安用の回路であれば事故やトラブルの際に電流が流れるのであり、計測回路であれば基準の電位を得るためのものであり常時電流を流すようには作られていない。

しかし現実の接地線(接地の種別を問わず)は漏電計をクランプしてみると分かるが無視できない大きな電流(アンペアオーダーの場合もある)が流れている。   (是非多くの場所で接地線に流れている電流を計測してみて欲しい。実態を知らなければ、実務としての管理はスタートできない。紙の上での議論、空想、空論が如何にはかなく無謀であるかを思い知ることができる)

本来電流が流れてはならない電線に電流が流れている原因は接地線同士で、あるいはキュービクルの箱、機械や器具そのもの、補助的に付けられた構造体、建物の構造体を含めて(通常は意識することはないが)電気的に複雑な閉回路を構成しているのである。この閉回路に変圧器の漏れ磁束あるいは電線に流れる電流による磁束で誘起電圧を生じ循環電流が流れるのである。電線、キュービクルの鉄骨、鉄パイプや建物の構造体としての鉄骨はその電気抵抗が非常に小さいので、わずかな誘起電圧であっても電流値としては大きくなる。

実際の経験を言うとオープンフレームの電気室で母線のガイシを支持するパイプでアンペアオーダーの電流を計測したことがある。また連設するキュービクルでは、箱間の接続を確実にするために渡りの接続を行うが、この渡りの電線の電流も負荷の大きい場合ではアンペアオーダーになるのは珍しくない。まさかと思われる接地線で意外な電流が計測される事は決して珍しい事ではない。

紛らわしいのは高圧ケーブルのシースアース。

ほぼすべての場合、シースアースは一旦ケーブルのサドルに落とし、ここから別のアース線でアース母線(A種接地)につなぐようにしている。シースアースの電流を計るのであれば、サドルに落とす前の電線をクランプしなければならないが、間違えてサドルから出ているアース線をクランプしている事例(これをシースアースの電流と勘違いしている)が後を絶たない。

一般に接地回路は電力関係では外被が緑の電線を使用するが、この緑の線の電流を計測して、単純にこれを漏電と判断してはならない。その周辺がどのような回路になっているかを詳細に調査し、確認すべきである。この場合、回路は何も電線だけではないということである。建物の構造体である鉄骨やフレーム、台座、サドルもれっきとした導体なのである。この電線以外の導体を忘れると、現実とは無縁のとんでもない結論になってしまう。恥をかかないためには注意が必要である。

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