意外な漏電

漏電は意外なものがとにかく多いがその中のいくつかを

その1

点検に行きB種接地線の電流をチェックすると、数分間隔で20A程度の漏電が発生している。キュービクルに触ると時々なんとなくピリピリ来るような感じがする。よくよく注意しているとピリピリ来るのと漏電とは一致している。ピリピリ来るのは漏電のせいであった。そこで原因の追及である。まず、幹線をクランプし零相分を監視する。この時B種接地線の電流をも同時に監視しておく。B種接地線に電流が流れた時に幹線側のメーターが振れなければその幹線には問題がなく、振れればその幹線に原因があることが判る。分岐点でも同様にして調査し不良の機械を発見した。その機械の動作を見ていると、特定の動作位置で短時間だけ漏電が発生していることが判った。状況と云うのは37KWの電動機(200V)が移動台の上に乗っており、この移動台が左右に移動するがその途中の特定の位置で漏電が発生するのである。この時点では他のシーケンスは働いてはいないのでこの移動部分に問題があることは間違いないと判断した。そこで、機械の本体と移動台とを結んでいるフレキシブルパイプの点検をした。機械が古くなりフレキシブルパイプの端部が少々傷んでいた。そこを外して見ると中はすすけていた。明かなアークの跡である。詳細に調査すると電線の被覆が破れアークの跡が残っていた。結局、原因は機械の新しい間はフレキシブルパイプが移動台の移動に順応していたが、運転中にフレキシブルパイプの端部に無理がかかり、ここが傷み、このため中の電線がフレキシブルパイプの連結金具に接触する様になり、ついには電線の被覆が破れてしまった様である。

ここでは電線の交換と、フレキシブルパイプの連結部分の修理で対処することにした。

その2

ダイキャストマシンでは型が閉まった状態で溶融状態にあるアルミニューム(湯)を注入するのであるが、型が開いた状態で湯の注入状態に入ってしまい、以後作業ができなくなってしまった。担当者は当然リレーの不良と考えスペアーのリレーと交換したが故障は直らない。たまたまその時に点検で顔を出した。待っていましたとばかり「何とかなりませんか」と来た。当然シーケンスの故障と考え図面を頼りに順番に当たっていった。しかし、不良箇所は出てはこない。そこで最後の手段として、支障のないことを確認して電源を投入してもらった。始動ボタンを押さないにもかかわらず湯の注入用のソレノイドだけは付勢されているのである。そこでこのソレノイドの付勢条件に関連する回路を全部調べたが、全て正常である。にもかかわらずソレノイドの端子電圧は200V掛かっているのである。試みに操作回路のR相とアース間の電圧を測定してみた。0Vである。これでピーンときた。悪いのはソレノイドしかないのである。ソレノイドに至るリード線を端子台で外し、担当者にソレノイドを外してもらう様に依頼した。担当者はソレノイドのことも考えられるので新しいものと交換してありますとのことである。それではとリード線の接続だけを外してもらった。そこでチェックである。ソレノイドは悪くはなかった。端子台からソレノイドに至るリード線をチェックすると完全アースしている。ここの場合R相が大地電位であるために、ソレノイドのR相側のリード線がアースすると、シーケンスの状態には関係無しにソレノイドは常時付勢されることになってしまうのであった。その問題のリード線は金属管とフレキシブルパイプとで配線してあり、外観的には何も問題は見られない。リード線を外して見たら絶縁被覆が破れ芯線がフレキシブルパイプに溶接状態になっていたことが確認された。しかし、その原因がリード線が不良であったのかパイプの内側にバリでもあってリード線を傷つけたのかは確認できなかった。

ここは電線を新しいものと交換してケリとなった。

月次点検であったが点検に入る前の段階だったので、漏電は測定していない。漏電測定していればソレノイドの励磁電流分の漏電が検出されたはずである。最初に漏電を測定していれば調査時間は大幅に短縮された筈である。

その3

ブレーカが切れて再投入できなくなったと連絡が入った。状況を聞くと、運転中に急にブレーカが切れてしまったとのことである。以前にも何回か切れたがその時にはすぐに再投入できたので特に問題にはしなかったとの話である。機械はプラスチック成形機であり、到着したときには大分温度が低下していた。そこで、ブレーカを投入してもらうと今度は難なく投入できた。ブレーカは漏電遮断器であり温度条件が変わったので、温度の低下した状態では漏電はなくなっているものと判断した。そこで、この状態で温度が上昇するのを待つことにした。数分もしたらブレーカが切れた。電源はヒーターだけしか入っていないので、ヒーターとアース間をテスターで順次あたっていった。これには時間は掛からない。すぐに不良のヒーターは見つかった。当然ヒーターの不良と考え端子を外しヒーターをチェックした。意外にも悪くない。するとリード線側である。テスターであたると対地間の抵抗は0である。リード線はマグネットスイッチの端子からヒーターの端子を結ぶ電線そのものであるから、ここの絶縁が悪いとすると電線そのものに傷がついている以外にない。今度は電線の目視点検である。例え電線に傷がついてもそこがアースされた金属部分に接触していなければ漏電はしないので探す部分は限られる。貫通部分の出口である。しかし、意外に厄介であった。傷がなんとも小さいのである。電線をできるだけ移動させ、回しながらライトを当てるとその角度によって銅線が微かに光るのでそれを確認できた。そこで修理であるが、電線の交換は少々大げさになるし、テーピングにはとても手が入らない。傷は針の先くらいしかないし、それが1本だけである。やむを得ず貫通部に塩化ビニールのパイプを切断してスペーサとして挿入し、電線が金属部分に接触することがないようにして、その場をしのぐことにした。

以上の3例は外見的な状況は全く違っているが、本質的なところは全く同一である。本来常識的には絶縁不良にはなり得ない所なのである。それが直接の原因は何であれ、絶縁被覆が破損し、機械が止まり、或いは機械が運転できない状態になり、或いは事故直前の状態で使用していた事になる。当然その例は多くはない。しかし、この事により支障が出て、或いは事故にまで発展する可能性のある事は論を待たない。がしかし、この種のトラブルの予防となるといささか困難である。機器、設備をいくら整備したところでこの種のトラブルの何%がが防げるであろうか。労多くして効果の少ないのが関の山である。それより、それらしい前兆を見つけたら、或いはトラブルが出たら素早く対応処置を講ずるのが現実的のように思われる。その前提としてはこの様な事例えの対応能力を高めておく事が必要であろう。

その4

ある工場で10Aを超える漏電が検出された。クランプメーターで分岐回路を特定し、その先を追っていった。そこは負荷機器は少なく、それも運転もしていない。当然負荷での漏電はない。分岐盤から先の電線路で漏電している事になる。両端からクランプメーターを当てながら範囲を狭めていった。CチャンネルにIV線を転がしてあるので踏台を使う面倒さはあったが原因箇所は難なく探し当てた。

この工場で、壁面にはしごをかける必要が生じたが、このはしごを安定させるためにCチャンネルにシャコマンをかませ、このシャコマンにはしごを縛り付けていた。問題はこのシャコマンにあった。無造作にCチャンネルに締付けたのである。この時CチャンネルにはIV線があったがそんな事はお構いなしに締付けた。結果はIV線の被覆をはがしCチャンネルに直接接触させてしまった。鉄骨を通しての完全地絡である。

処置はシャコマンを掛替え、IV線のテーピングで完了。

その5

点検に行ったら真っ先に声をかけられた。風呂場でピリピリくるという。従業員用の銭湯並の大きな浴槽であるが、湯舟、床はタイル張りで、電気関係のものは天井の照明と、洗場の隅にある洗濯機くらいである。この洗濯機も入浴時にはコンセントから外してあるとの事で、感電の原因とは考えられない。どう見ても感電する状況は考えられない。

感電のことは後回しにすることにして、点検に掛りキュービクルに行きドアを開けようとハンドルに触れた瞬間、猛烈な衝撃。いくら感電しても調査をしない訳にはいかないので軍手をしてドアを開け漏電測定をした。漏電が100A出ていた。この漏電のためにキュービクルの電位が上昇していたのである。分岐回路を探していったが途中は壁に埋込まれ、負荷側での漏電は出ていない。途中の壁に埋込まれた部分に原因箇所があるはずである。関係者に聞いたところ、前日壁を張替えたとの事。見れば釘を打付けてある。釘が電線に刺さっている事は間違いなさそう。操業中で、しかも壁板を外す訳にはいかず、見れば分るはずだからと、外して貰う事でバトンタッチ。

ところで、風呂場の感電は何時からか聞くと昨日からとの事。これで風呂場の感電の原因は掴めた。工場のボイラーの蒸気をパイプを通して直接湯舟に引込み、風呂を沸かしているのである。蒸気の配管は工場の建家に固定されており、工場の建家の電位が湯舟に直結し、中のお湯と洗場との間に電圧が生じていたのである。

その6

10数Aの漏電の原因箇所を探していったら、ポンプ小屋にある消火栓のポンプのモーターであった。そして運転こそしていないが、まるで運転状態のような熱を持っていた。調べてみるとヒューズが2本切れ、残りの1本から巻線の一部を通り、漏電している。制御回路が2コンタクターの△-Y起動だったのである。更に調べると火災報知器の発信器をフォークリフトで壊していた。当然ベルが鳴ったがこれは間違いと分かっていたので直ぐに停止させた。しかし、消火栓のことまでは気が回らずに放置した。ポンプは締め切り運転となるので過負荷焼損。そしてヒューズが切れた。しかし、2コン方式であったので漏電は次回点検まで継続してしまった。

モーターが焼けていて、それが判らずに漏電が継続するといった事態は一寸考えにくい。しかし、通常では動くことのない、そして又目に触れることのない場所にあるモーターの場合にはこれが現実にあり得るのである。

以上のような事例は結果を見れば漏電していて当り前でしょうが、B種接地線をクランプして大きな漏電が検出されたときこの原因を想定できるでしょうか。

その7 漏電が出たりでなかったり、最後に不点灯

点検で電灯回路で8Aの漏電が検出された。連続である。幹線を辿っていき、分岐ブレーカーまで突止めた。負荷は天井の水銀灯。電線は高い天井の裏に行っており、工事業者の協力を得ないと調査できない。その水銀灯は作業中は切ることができないので、作業終了時にはプーカーを切ってから帰るように指示してその場を後にした。数日後工事業者と日程調整をし出かけたら今度は漏電全くなし。漏電が勝手に出なくなることはあり得ないので、仕方なしに再度日程調整。それから数日後、担当者からその回路の電灯が点かない場合があるとの連絡が入った。それも数ある中の1灯だけ。出かけてランプを外して調べたが何処にも問題ない。そしてその時にはちゃんと点灯する。この状況では漏電との関係は考える余地なし。更に数日後不点灯の度合がひどくなったとの情報。その後業者と打ち合せの日に行くと、最初に点灯状態がおかしくなった電灯の周辺の一群が完全消灯状態。ここまで来ると不点灯と漏電とが直結していると判断して間違いない。接続点に問題ありと判断した。工事業者と、消灯している一群とその他のものとの接続点が何処にあるのか、を探すことになった。この判断は工事上の問題で、工事業者の経験に頼るしかなかった。手間はかかったが、辿り着いた。差込み型のコネクター(ワゴ)が完全に焼けていた。修理はこの繋ぎ直しであっけなく完了。

さて、その漏電と焼けた原因。

ここの天井裏は結露しやすい場所。そして電線は天井裏なので当然転がし配線。通常接続部分は立てておくものであるが、ここの場合電線と同じ高さになるように綺麗に倒して並べてあった。ここに結露した水が溜ったのである。ワゴなので充電部に直接侵入。同時に漏電発生。水が引くと漏電はなくなる。しかし、接続部分は漏電により電気分解。接触は時間の経過と共に不良になっていく。水銀灯なので電源投入時に大きい電流が流れる。当然接触部の電圧降下が大きくなる。水銀灯の点灯電圧には多少の差異があるので点灯電圧の高いものは点灯が鈍ることになる。接触の程度が悪くなるとその頻度は大きくなる。そして最後には完全に接触不良になり、点灯しなくなってしまった。

21/11/23

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