何をするのか

実務に当たっては、漏電をとやかく言う前に、目の前にある接地線に現実にどのような電流が流れているのか、を測定し いわゆる接地回路に流れる電流の実態 を知ってほしい。

接地線の種類を問わず接地に関連する緑線のすべてについてである。接地線ではないがオープンフレームの変電設備ではフレームを構成するパイプの電流も測ってみて欲しい。実現は困難と思うが建物の鉄骨も。そしてその電流はどの様な電気回路が構成されているのか、電圧源は何なのかを考えて欲しい。多くの人が 何を今更、それが何になる、とバカにするであろうが、この予備知識無しに漏電の測定を始めても 後で恥をかくような結論になったり、測定開始早々に前に進めなくなり 頓挫 するのがオチである。

漏電の測定とは方向違い、無縁ではないかと言われるであろうが、漏電探査のための測定を進める上においての 勘違い 測定ミス を防ぐための大事な基礎知識になるものである。実務ではこの知識を抜きにしては対応は不可能と考えること。

この前段階を抜きにして一気に漏電測定を始めてもスタート早々大きな壁にぶつかり、また誤った判定をしてしまうものである。

無駄と思わず、ここからスタートして欲しい。測定個所は多いほど良い。

(設備の状態をどこまで見ているのか、また知っているのか(本来の目的を達成するための設備ではなく言うなれば裏方と言えるであろうもの)の基礎データの一つと言ったら言い過ぎだろうか? )

漏電に対しての対応は、問題のあることが想定されたら、何をおいても原因を除去して漏電をなくすことにある。

それには原因箇所を探すことが必須となる

通常の故障やトラブルに対応する場合には、

  1. その現象、周囲状況を詳細に観察、調査、
  2. 必要に応じて測定し、
  3. その状況、現象に至るであろう理論を展開、分析し、
  4. 更なる観察、調査、測定を繰返していく

のが常套手段である。

しかし、事 ”漏電 ” に関しては、原因箇所を探すにあたっては、発生原因に関して理論を振り回したところで何の役にも立たないし、その前に振回すべき理論として何があるのかさえ出てこない。別記 原因の具体例 で示してあるが、これらの事例は見方、扱い方によって分類することはできるが、これを分析し、詳細解析したところで調査の手がかりは何も得られない。(しかし、知っていれば調査手法に幅ができて調査に当っての壁が低くなる) この記事はこれほどの想定外の まさか  があることを知ってほしいのである。

そこに要求されるのは原因箇所を探査するための 

  1. 構想  どの様に攻略するかの構想。何から始め、どの様に進めるか
  2. 手法  構想をどの様に具体化するか
  3. 知識  道具の使い方、測定値をどう判断するか、経験の積み重ね 

である。

現実には、漏電探査の場合には、(ほぼすべての場合に)

「状況の掌握」(どの分岐線で漏電しているのかの追求)

を続けていけば、原因箇所にたどり着ける。

現実には ただ測定の繰返し になる。

それにしても、掌握のためには設備の現状を回路図に載せることは絶対必要条件。

(敢て紙の上に図面を書く必要はない、調査の段階においては頭の中だけで充分。ただ現実問題として、煩雑になったら頭の整理のために紙の上でのポンチ絵程度の単線結線、系統図は欲しくなる) 

関係回路を単線結線で表せないようではその先は無理。

注意が必要なのはアース線の電流。A種接地、C種、D種接地では色々な形で閉回路を構成している場合が多く、閉回路内での迷走電流である場合が少なくない。これらと漏電とを区別するには徹底した観察力、洞察力、それに経験が要求される。

漏電の測定は全ての場合クランプメーターで実施するが、B種接地線であれば内径が20mm程度の小型のものでも充分であるが、分岐線では0相分を測定することになるので、大きい幹線では内径が100mm以上といった物も必要になる。大が小を兼ねるとは限らない。少なくとも3台、使い勝手を考えると5台以上欲しくなる。電線が物理的に重なっている場合、特に太物では隙間にCTを挿入できず、二分割のCTでは対応できなくなり、フレキシブルのものも欲しくなる。

ここらが漏電の原因調査の大きな壁になっている。

ただ、注意すべき事は、測定しなければならない全ての箇所でクランプできる訳ではないし、指示値が正確な漏電の値である保証はないことである。これらの対処法は電気理論も必要だが経験がものを言う。

また、原因箇所が電線路であれば漏電は連続であり追求は容易であるが、機械の内部であれば機械の動きにより間欠的になり次の漏電の発生を待たないと進めないことになる。しかし、この現象は逆に機械、或は部署を特定する要素としても使える。

最終確認はほぼ全てと言って良いくらい見ただけで充分。測定器を使うまでもなく不良であると判断できる(多くは素人でも不良と解る)。もし必要があるとしても、回路テスターの抵抗レンジで当たって不良である事を確認する。それで全てである。メガーが必要な場合が全くないわけではないが、それは極めて例外と言える。50年以上にわたる数千回の経験で明確にメガーが必要だったと意識しているのはただの1件しかない。

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