お客から誤動作やトラブルの修理の要請に関して、次のような事例に遭遇した事はないだろうか。
- トラブルの症状が接点不良、回路上の部品の不良、あるいは断線による場合とは様子が違う
- 本来の動きでない(シーケンス上あり得ない)動きをする
- 不良の部品を修理、交換したのに、再度同じ症状のトラブルが生じた
- センサーそのものは正常なのに、症状としてはセンサーが不良の様相を呈している
- センサーの入力回路の破損
- 停止ボタン押しても機械が止まらない
- 部品の焼損で絶縁不良になっていた
- 絶縁不良ではない機械でピリピリくる
- 機械の電源スイッチを切った状態でもピリピリくる
⑧⑨は明確に他の場所で漏電が発生している。
④⑤は自身の漏電だけでなく他所の漏電の場合でも発生する。
上記のような場合には、回路図、シーケンスの概念から追求していくと大きな壁に突き当り、散々苦労するはずである。
このような場合の対応方法について、電源側の管理をしている立場から提案したい。
修理の内容が純粋にメカの問題であることがはっきりしている場合は別にして、不良箇所の調査、追及に入る前に
その機械の入力側で漏電の測定
をすることを勧める。
そして、下記の対処方法に従って調査を進める。
しかし、漏電の影響は修理の対象である(と思われている)機械の漏電だけではなく、遠く離れた場所での漏電の影響を受ける場合が希にある。
したがって、調査を進める段階で前記した①③の様な症状が見られたらその機械の漏電だけでなく他の場所での漏電をも疑う必要がある。
特に⑦⑧の場合には他の場所で漏電しているからこそこの症状を呈するのである。
この様に対象の機械以外で漏電がありそうな場合には、サービスマンとしては自分の担当外、専門外となるので簡単に手を出すわけにはいかないはずである。そこでお客に協力の要請をし、電気設備の総合的な管理をしている電気管理技術者に、すべての回路の漏電の測定をしてもらうことである。そしてできれば立ち会ってもらった上で修理を進めると事がスムーズに運ぶ。
ここでは、サービスマンは間違っても変電設備(電気室、キュービクル)には手を出してはならない。
修理の手順、対処方法
その機械の製造元で、電源を投入しただけの状態、運転状態での漏電の標準の値が出ているはずである。
もし公表していない、と言うのであれば、何らかの手段で聞き出して欲しい。
(現実の数値としては、少ない場合には数mA、多い場合には30mAを超える場合もある。もし標準値が30mAを超えるような場合にはその根拠をも調べておいて欲しい。特別な理由があるはず)
その基準になる値と測定値とを比較する。
測定値が標準の値に近ければ、そのトラブルは漏電とは関係ないと言える。この場合にはこれまで通りの手順でチェックしていくことになる。
もし測定値が標準の値に比較して大き場合は当然であるが、逆に小さい場合でもトラブルは漏電が絡んでいると考える必要がある。
そしてその値が運転の過程、あるいは操作の状況によって、どのように変化していくのかを仔細に観察する。状況とその時の漏電の値をメモしておくと後で頭の整理がしやすくなる。その変化の状況をシーケンス.回路図と照らし合わせていけば原因箇所は絞れるはずである。
漏電が絡んでいる場合には漏電の原因箇所の調査から進めた方がシーケンス.回路図から論理的に誤動作の原因箇所を探すよりはるかに楽なはずである。
トラブルのある機器で漏電がない場合であっても、他の場所の漏電の変化とトラブルの症状の間に関連があれば、その漏電の煽りを受けていると言える。修理が必要な場合もあるが、元の漏電を断つ以外に対策がない場合もあり得る。
結果論として言えば、トラブルが解消されれば、お客の要請に応えた事は間違いないが、修理と言うより、漏電の原因の解消であったと言う場合が少なくないはずである。
またトラブルに至った本質的な原因(多くは漏電であるが)が解消されないままで修理した為、同じトラブルの再発といった無様な失態は完全に防ぐことができる。
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